説明
幼き日といっても記憶はさだかではないが、頻繁に近畿圏の寺めぐりに連れて行かれ、仏像というものに出会った。
仏像たちの持つバックグラウンドなどの知識は皆無であったが、そこから発せられる得体の知れない雰囲気・内部から漏れ出る濃密な空気のようなものを感じ取りとても恐怖した記憶がある。
おそらく子供心に『畏怖』というものを感じとっていたのであろう。
同じような時期、興味の対象であったSF映画やアニメ、ジャポニズム的ロボット表現などのサブカルチャー。
それらに対しても製作者の徹底的なこだわりというものを目の当たりにした時に同じような匂いを感じとっていたと思われる。
やがてそれは『畏怖』という感情から『畏敬の念』へと少しづつ変化していったように思う。
人生において制作というものが大きなウェイトを占めはじめた時、忘れていたその感情が眼を覚ましはじめた。
そして、その感情を掘り下げていきながら作品に落とし込むことをはじめた。
僕の中でキャンバスが変容した結果としてフィギュアという表現手段が生まれ、掘り下げてきたものを内側にこめた作品をGuardiansと呼んでいる。
それはまさに、幼い日に仏像やサブカルチャーから感じとった『畏怖と畏敬の念』をダイレクトに表現するための手段であり、人生において今までもそしてこれからも蓄積され続けてゆく様々な感覚や精神性を内包するための聖櫃・匣としての役割も担っている。
上根 拓馬 | Takuma KAMINE
大阪府生まれ。東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。
日本各地、アメリカ、上海・台北等、個展・グループ展・アートフェアでの出展歴多数。 彼の作品は、日本の新旧の文化を、現代の日本を表すメタファーとして造形する試みである。時には本物の動物の骨を「顔」に持つ作品は、日本的なものとは何か、という主題を追求する。